『Oravoの音楽 Vol.7
ビートルズ大学 富山校〜世界同時リマスターCD発売記念講義〜』2009.10.31(土)@フォルツァ総曲輪
宮永正隆(音楽評論家・ビートルズ大学学長)/バッタモンズ/越中屋びーとるず
何かを突き詰める人間のイキザマ…
そこにあったのは“人生の賞味法”
東京・新宿を中心に、これまで80回近く開催されているビートルズ・トークライブ『ビートルズ大学』が初めて富山で開催された。
今回は“実技実習”として富山を中心に活動中のコピーバンド・バッタモンズと越中屋ビートルズも登場し、学長・宮永氏による講演は9月に発売されたリマスター盤の音源聴き比べも盛り込まれた二部制の特別版ということも相まって、チケットはソールドアウト。会場内には、ビートルズのジャケットや特大ポスターが飾られ、ドリンクコーナーでは、ビートルズが来日公演の記者会見にて飲んでいた「ジョニ黒のコーク割」も販売…と、開演前から“ビートルズ尽くしの一夜”が演出されていた。

19時、満員の開場に響くチャイム音とともに、いよいよ『ビートルズ大学 富山校』の授業が始まる。最初に登場したのは、どこかで見覚えのあるような法被を身にまとった越中屋ビートルズ。まだカタめの客席に向かい「我々の演奏はじっくり聴いていただく必要は無いので一緒に唄いましょう!」と一言。すると、客席中がそれぞれにリズムをとったり、手拍子をしたり…と、それぞれが自分の楽しみ方を見つけていく。バラバラに見えながらも芯にはビートルズがある光景といった感じで、とても印象的な様だった。

続いては、お待ちかねの宮永学長による講義第1部。登場するなり、お隣の石川県出身である学長が幼い頃からの富山にまつわる思い出を語り、客席の心を掴んでいく。学長自身、「特別の感慨で向かえた」というこの日。第1部の講義は「ビートルズの歴史」をテーマに滅多に見られない映像等を使いながら、彼らが走り続けた時代を前期・中期・後期に分けて紹介していく内容だった。講義冒頭、熱狂的なファンの黄色い歓声が飛び交う映像を背に「この当時、弾きながら唄うのも画期的なら、作詞作曲を自分たちでするというのも画期的。その上、全員がカッコイイという(笑)」と学長。
尽きることの無い様々なエピソードを紹介しながら「お見せしたい、お伝えしたい…その誘惑との(時間的な)闘いなんですよ(笑)」と言いながら、来日公演時にも“自分らしさ”を大切にした彼らのエピソードを語る。その直後「ビートルズ精神とは常に自分らしくあれってコトなんじゃないかと僕は思う」と話した言葉が胸に響いた。純粋な“好き”という気持ちからここまで突き詰めていった学長と、彼らのイキザマに共通点があるように感じた瞬間でもあった。
彼らの歩みを時系列で感じることが出来た第1部の最後。感動的にすら聴こえてくる彼らの楽曲とともに流れた映像は、“今”を生きている自分としてというよりも、その時代にタイムスリップしていたかのような感覚でぐっと胸に迫ってくるモノがあった。

休憩を挟んでの3限目は、本人曰く「コスプレバンド(笑)」だというバッタモンズの実技実習。越中屋ビートルズ同様、これまた、どこかのジャケットで見覚えのある衣装で颯爽とステージに現れた。「今日は、1967年あたりの曲を中心に演るのですが…この時代の曲は難しいんですよね。じゃあ、何でやるかっていえば…先に衣装を買っちゃったから。これが着たくて着たくてね(笑)」と、会場中の笑いを誘う。音だけではなく、見た目でも楽しませてくれた彼らには、演奏後に会場からアンコールがかかるほどだった。

そして、富山校最後の授業は学長宮永氏の講義第2部。ビートルズ解散からいきなり今回のリマスター音源発売に至ったわけではなく、第1部の講義内容の続きがあったから今回に至っている…と、1部同様に映像を交えながら解説を加えていく学長。またしてもタイムスリップするような感覚に陥りながら、段階を踏んで“今”にたどり着く。自宅で鳴らせば確実にご近所から苦情が出るであろう大音量でリマスター音源の聴き比べが始まれば、学長だけではなく、会場内でも目をつぶり音を逃すまい! と耳を澄ませる生徒の姿も多く目にした。音を言葉で表現するということは、非常に難しいことだと思うのだが、彼らの音に対して学長が使う「マロい」「潤んでる」「つつましやか」「曇ってた空が晴れて青空が広がる」等といった言葉の数々が、彼らの音をよりドラマチックに感じさせてきた。
今の時代におけるビートルズを思えば、一般的にはレジェンドとして捉えがちな4人の軌跡。それを当時の時代的な背景や、そこにいた様々な立ち位置の人々についても流れる映像に合わせて解説していく学長の講義スタイル。実技実習を含む約3時間に及ぶ『ビートルズ大学 富山校』は、その時代に生身の人間として生きていた“ビートルズ”という人たちに少しだけ触れられたような気がした。
講義中「僕はビートルズの賞味法を語ってるけど、(●●があるライフスタイルという点で)人生の賞味法を語ってる」と話した学長。その姿と、音だけではなく人としての魅力を再認識させられたビートルズは、何かを突き詰めながら生きているイキザマを通して、 “自分らしく”生きる“人生の賞味法”を伝え続けてくれるモノのような気がした。
Text:ema iwata